当院の分娩に対する考え方
分娩に対する考え方
近年、女性が様々なシーンで、第一線で活躍する場が増えています。
20代30代と仕事に集中してこられた方も、結婚などを機にライフスタイルを変え、 家族にとっての生活環境を考え自然豊かな湘南、鎌倉、横浜界隈に移り住む方も多いと聞きます。
そんな時代背景をうけて、30代後半で初産を迎える方も年々増えています。
高齢出産には様々なリスクがあるのは周知の事実ですが、当然ながら分娩の喜びに変わりはありません。
2013年9月の開院以降、ここ矢内原医院の特徴の一つとして上げられるのが、出産平均年齢が高いことにあります。
矢内原ウィメンズクリニックや他院での不妊治療を経て、当院で分娩された方が多くいらっしゃいます。
そういった実績からも、妊娠成立方法に関わらず、すべての妊娠された方・お子さまをお持ちの方への指導やケアも得意としています。
また、当院では助産師外来を設け、助産師と和やかな雰囲気の中、不安や疑問などをお話していただく時間を積極的に作っています。
この時代に妊娠・出産・育児を経験するー 喜びもありつつ、不安も大きいと思いますが、正しい知識を身につけ、然るべき高次医療機関への連携を取りつつ、 心と体の準備をして、満足のいくお産になるよう
指導・サポートしてまいります。
基本スタイルは自然分娩です

しかし、予定日を過ぎた場合には胎盤にも寿命があり、妊娠41週になると胎盤の機能が落ちて赤ちゃんの調子が悪くなる傾向にあります。そのため通例においては予定日(妊娠40週)まで自然に陣痛が来ることを待ち、もし予定日を過ぎても分娩に至らない場合は、陣痛を起こす薬(陣痛促進剤)を使い分娩に至るようにします(分娩誘発)。
医学的な介入は、十分な説明の上、最小限にかつ有効に行ってまいります。
帝王切開が必要な場合も準備の上、適時施行致します。
胎児が苦しそうな時、吸引分娩、鉗子分娩を施行致します。
立会分娩は可能です。
※感染症の流行状況により、立ち会いの条件が変わります。
詳細は 感染症蔓延時の当院の対応について をご覧ください。新生児科(小児科)医師の分娩立ち合い

分娩直後の児の状態を、いち早く判断し、適切に対応するために必要な処置です。
妊娠経過中にハイリスクと判断される場合

経腟分娩について
当院では、ソフロロジー法やフリースタイル分娩、無痛分娩は取り扱っておりません。
ラマーズ法
よく知られている『ヒッ、ヒッ、フー』の呼吸の仕方をはじめとし、お産の進み具合に応じていくつかの呼吸法を用いる方法です。
ソフロロジー法
出産に対する不安や恐怖心を取り除きリラックスして出産に挑むようにする。妊娠中から音楽などを聴き、イメージトレーニングをして練習しておくことが必要。当院ではピンポイントでの指導・実施はしておりません。
ガスケアプローチ
妊娠中から骨盤ベルトを併用しながら正しい姿勢や呼吸法を練習することが大切。骨盤底筋群に負担をかけずに分娩する方法。
当院ではピンポイントでの指導・実施はしておりません。
フリースタイル分娩
決まった体勢はなく、自由に行う分娩方法です。出産直前まではママが楽な姿勢でのサポートを行いますが、出産直前は医療介入・産後の出血に備え仰臥位(仰向け)となります。
無痛分娩
当院では対応しておりません。
計画分娩
児の発育や母体に何らかの問題があり、早期の出産が求められる場合、事前に分娩日を決定しての出産となります。ご家庭の都合のみで分娩日を決めるということはあまり行なわれておりません。
帝王切開について
帝王切開には「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」の2パターンがあります
予定帝王切開
・予め帝王切開の日時を決めて、その予定された日に実施する帝王切開のこと
例・・・既往帝王切開/逆子/筋腫核出術の既往歴/妊娠高血圧症候群の母体合併症等
緊急帝王切開
お母さんや胎児の状況によって、急遽すぐに実施する帝王切開のこと
例・・・分娩中の児心音異常/分娩停止/母体の合併症等
切開方法について
帝王切開には、お腹の中央を縦に切る「縦切開」とお腹の下部を横に切る「横切開」の2種類の方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
腹部の筋肉や腱が縦に走っているので、縦切開の方が自然で出血も少ないのですが、傷跡がどうしても目立ちます。横切開は恥毛のすぐ上を切開するので、傷跡が目立ちにくいという利点がありますが手術に時間がかかります。当院では、基本的に跡が目立たない横切開を行っております。
ただし、その時の分娩状況で縦切開が望ましいと判断した場合や前回が縦に切開されていれば縦切開になります。
赤ちゃんとの面会について
通常は腰椎麻酔を行いますので、お母さんの意識もあり、赤ちゃんの産声を聞き、赤ちゃんとご対面することができます。カンガルーケアは安全を考慮し手術中には行っておりません。
ママの状況(医療処置に時間がかかる場合等)によってはすぐに面会ができないこともあります。
痛みについて
手術中は麻酔が効いているため、痛みはありません。(緊張や不安が強いと痛みを敏感に感じる場合があります)麻酔が切れた後は、切開部分の痛みや子宮収縮の痛みを感じることがあります。 痛みは徐々に治まりますが、痛いときは我慢せず医師や看護スタッフにご相談ください。
帝王切開後の経膣分娩について
当院では、既往帝王切開の方の経膣分娩は行なっておりません。
お腹の傷跡について
傷口は経過に問題がなければ、3ヵ月程度で赤みがとれ、1年くらいで目立たなくなります。
ただし、個人の体質によってはケロイド状になる人もいます。帝王切開の傷跡をできるだけ目立たなくするため、術後に過度な乾燥や擦過などの刺激を与えないなど、ご自宅でもケアしましょう。
アドバイスも行っておりますので医師にご相談ください。
急速遂娩
赤ちゃんやお母さんが危険な状態の場合や、分娩の進行における不具合により、できるだけ早い分娩を望まれる場合があります。
経腟分娩が可能と判断された場合は、以下の方法を行います。
吸引分娩
吸引カップというゴム製のカップを児頭に装着し、機械で陰圧をかけて引っ張り出す方法です。
鉗子分娩
鉗子という器具を児頭に装着し、引っ張り出す方法です。
いずれも適切な位置まで児が下降していることがポイントで、陣痛の力とお母さんの娩出する力も同時に必要です。
また100%安全な方法ではなく、場合によって児頭に血腫ができたり、母体の傷が大きくなってしまう可能性があります。
当院の分娩件数や傾向
分娩時年齢別グラフ
高度生殖医療(体外受精・顕微授精)を経てご妊娠された方へ
高度生殖医療(体外受精・顕微授精)を経てご妊娠された方へ
当院は特性上から高齢妊娠、不妊治療後の妊婦さまが多くいらっしゃいます。
分娩される方の50%は35歳以上、10%は40歳以上、また体外受精後は30%になります。
これまで数多くの分娩に立ち会わせて頂き、以下のように分かってきた事もあります。
体外受精妊娠は
- 臍帯/胎盤異常が多い
- 陣痛が起こりにくい、陣痛が弱い事が多い
- その為、医療介入を必要とする分娩(吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開)が多い
- 分娩後の出血が多い
これまで当院でお産された2000人の方を対象に産後出血の程度を分析してきました。産後出血は平均として500ml以内ですが、なかには出血量が800ml以上の多量出血の経過をたどる妊婦さまがおります。
その方々を後方的に検討したところ、
1.児の体重が3040g以上 (1.5倍高い)
2.体外受精での妊娠 (2.7倍高い)
この2点が、多量出血における単独の要因としてあがってきました。
(*Yanaihara et.al. J Obst Gynecol. 2018)
体外受精児は自然妊娠よりも児の発育が大きくなることが分かっています(原因は不明です)。児が大きいと分娩時の陣痛が弱かったり、子宮の戻りが悪く出血量が増えたりします。
分娩時の出血が多いと母体の命にも関わる事があり、早急な対応が必要となります。